聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
ごはんを食べると、帰ってきた実感が湧いてきた。白米に味噌汁サイコー! と思った。
両親からは何があったのか矢継ぎ早に聞かれたが、「あとで」と誤魔化した。異世界に行っていたなんて言ったら、頭がおかしいと思われるだろう。
「ああ、警察にも連絡しないと」
母はそう言ってスマホを取り出す。
「なんで?」
「行方不明で届けを出したのよ」
そう答えて、廊下に出る。
「私がいなくなってからどれくらい? 今日は何日?」
父が日にちを答える。
ということは、向こうとこちらの時間経過は同じなのか、と三千花は思った。
電話を終えた母が戻ってきた。
「仕事は退職届けを出したわよ」
「なんで!?」
「このままじゃ無断欠勤で解雇だと言われたのよ。そうなる前に自分で辞めたことにしたら経歴にキズがつかないから」
「そんなあ」
仕事はわりと好きだった。売り場の展示を考えたり、便利なのに日の目を見ない商品をどう売るか考えたりするのは楽しかった。お客様の笑顔を見ると、達成感があった。
「しばらくゆっくり休みなさい。それから考えても遅くないわ」
母が慰めるように言う。
「うん……」
あの王子のせいで、と三千花はアルウィードを呪った。
「もう少ししたら警察が来るから」
「なんで!?」
「いなくなった日に、三人殺される事件があったのよ。あなたの通勤路で。だから話を聞きたいんですって」
三千花の顔からさあっと血の気が引いた。