聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
「じゃあ、私がほどくからいい」
「君がやると本人がふきとぶぞ」
 アルウィードが脅す。

 三千花は言葉につまる。
 遊びで何かをしたことはあるが、繊細なコントロールで魔法を使ったことはない。

「わかったら大人しくしてくれ。こいつには害を加えない。今日はもう無理だが、明日にはあちらに送るから」
 そう言うアルウィードの顔は青ざめて見えた。

「また魔力が足りなくなった……のね」
「君が予定外に使わせるから」
 アルウィードは三千花を抱きしめる。

 彼女は抵抗できなかった。
 その力の強さに、彼の憂いの深さを思う。

 アルウィードの発言から察するに、神殿でのあのとき、やはり襲撃者は人を殺していた。
 三千花を送還する魔法の完成があと一歩遅ければ、彼女もまた命を落としていたに違いないのだ。襲撃者があきらめたのは、巻き込まれて一緒に送出されるのを恐れたためだ。

「事件は君のせいだという噂がもう流れている。早すぎる。何者かが君を(おとしい)れるために計画したんだろう」
「ファリエルタさんは……」
「残念ながら」
 三千花は言葉を失った。

「君はもう重要人物なんだ。安易な行動は慎め」
 三千花はアルウィードのその言葉には答えず、別のことを口にした。

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