聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
三千花は混迷の底にいた。
昼も夜も痴漢に遭遇してしまった。
おっさんは真正の痴漢だが、イケメンの方は一応自分を助けてはくれたようだった。
いやいや、あれがもしイケメンの仕組んだ演出なら、助けたうちには入らない。
だが、そんな仕組むような意味がどこにあるんだろう。
個人撮影の映画にしては手が込みすぎているし、迷惑ユーチューバーの素人を巻き込むドッキリだとしても、手間がかかりすぎている。
誰かと間違えて連れてこられたのだろうか。
きっとそうに違いない。
だが、間違いであんなに何度もキスをするだろうか。
バッグからウェエットティッシュを出して拭う。
あんなのはノーカンだ。
ウェットティッシュを戻すときに、手がスマホに触った。
「スマホ!」
なんでこんな便利な連絡ツールを失念していたのか。
すぐにバッグから取り出す。緊急通報を試みたが、圏外だった。
三千花はため息をついた。