聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
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晴湖は三千花が回復してきたのを見計らい、シェリナも散歩に誘った。
だがシェリナは拒否した。
「あんたたちとは違うから」
それなら、と晴湖はあっさりと引き下がる。
が、シェリナはそれも気に入らない。
一度断ったくらいで何よ。もっと誘えば行く気になるかもしれないじゃない。
結果、シェリナは部屋にこもる。
実際のところ、彼女は自分がどうしたいのか、よくわかっていないのだ。だから自分がやりたかったかもしれないことが彼女のそばから離れていくことに、イライラしてしまう。
だが同時に、やりたくないことかもしれないから、誘われてもまずは拒否してしまう。
すべては保身から来ているのだが、自覚がないので、イライラのループは彼女を捕えて離さない。
傷つきたくない。楽しいことだと確証があれば行くのに。その確証をくれない晴湖が悪い。
無意識に彼女はそう思っていたのだ。
毎日のように出て行く晴湖も一緒に出かける三千花も気に入らない。晴湖は三千花ばかりを気にかけて、シェリナのことは放りっぱなしだ。一緒にこちらに来たというのに。
自分が拒否していることを棚に上げ、シェリナは晴湖を内心で責める。
こちらに来てすぐ、彼女にこっそりと接触してきた者たちがいた。神殿の心ある有志だと名乗った。真の聖母はシェリナだと見抜いている、だから協力したいと彼らは言った。
なのに、その後の接触はない。
それもまたシェリナを鬱屈させた。
その日も同じように晴湖の誘いを断り、イライラしていたところだった。
部屋のドアがノックされ、ユレンディールが訪れた。