聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
男が2人、入ってきた。
目が覚めたらしいシェリナはぼうっとしていて、反応が鈍い。
三千花は無意識に逃げようとして体をひねった。が、縄が食い込むだけで、まったくどうにもならない。
男は無言で三千花を突き倒した。
彼女を抑え、その指に触る。
「何をするの!?」
「大人しくしろ!」
男は三千花の背を膝で押さえつける。息が詰まりそうになった。
「くそ、はずれない」
もう一人が言う。触られているのは左手の薬指だった。どうやら指輪をはずそうとしているらしい。
「指を切るか」
男に動く気配があった。ナイフを取り出しているのか。三千花の位置からは見えない。
「離して!」
どうしてこんな暴力を受けなくてはならないのか。自分が何をしたというのか。
「何をしている!」
扉の方に新たな男が現れた。低い声の男だった。
「あ、いえ、その……縄がほどけてないか、確認していただけで……」
三千花をおさえつけている男が狼狽えながら答えた。
「おおかた、指輪か何かを盗るつもりだったんだろうが」
男がジロリと睨むと、三千花を押さえつけた男たちは小さく肩を狭める。
「そいつは売るんだから傷をつけるな」
扉の男が命令する。
「殺す予定では……」
「殺したことにして国外に売ればいいだろう。そっちは売れそうにないな」
シェリナを見たあと、男は三千花の顔を見る。
「殴ったのか?」
「お、俺たちは何も。来たときにはもう」
男はシェリナを見た。
「何よ、あんたたち!」
意識がはっきりしたらしいシェリナが叫ぶ。
「黙れブス」
低い声の男がシェリナを蹴る。
シェリナは簡単に倒れた。うう、とうずくまって呻く。
「やめて、乱暴しないで!」
三千花が叫ぶ。
「お前も黙れ」
三千花の首にナイフがつきつけられる。
「お前があの女を殴ったのか」
低い声の男がシェリナに問う。
「そうよ。何が悪いのよ。そいつは悪女よ!」
男はフン、と鼻で笑った。