聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
 馬車を見て貴族と思って狙ったのか、聖母と知って襲ったのか。
 人身売買の人さらいなのか。身代金目的の誘拐か。

 また三千花があちらへ帰ろうとして無茶をしたのか。それでこんなことになっているのか。
 だが、三千花が他人を犠牲にしてでも自分の目的を果たす人間だとは思えない。

 いや、そんなことを考えている場合ではない。

 三千花は生きている。それを前提にした場合、気配が感じられない理由として考えられるのは大まかに2つ。探索魔法の範囲にいないか、異世界にいるか、だ。

 異世界転移をするか、もう一度探索魔法を使うか、迷う。

 こうしている間にも、三千花に危険がせまっているかもしれないというのに。女性には命とは別の危機もある。

 早く探し出さなくては。
 もう一度探索魔法を使って、それでだめならあちらへ探しにいく。

 そう決めたときだった。
 小さな魔力の流出を感じた。

 三千花だ!
 即座に探索魔法を広範囲で放つ。

 流出は一瞬で、また消えた。

 だが、すんでのところで、探索魔法にひっかかった。

「そこか!」
 アルウィードが叫ぶ。

「ソルダーム地区だ! すぐに兵を送れ!」
 それだけを言い、アルウィードはすぐに転移魔法を発動した。

 叫んで消えた第二王子に呆然とした兵士だったが、すぐに上官に報告に行った。

 上官はすぐにダウナルドへの知らせを送る。一人の兵士を残し、手勢を連れてソルダームに向かった。

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