聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜


 * * *


 家に帰ると母親が心配して出てきた。が、三千花は疲れているからと事情を話さず部屋に戻った。取り繕う気力などなかった。

 寝る準備をしてから、外が気になって窓を開けた。
 黒猫が来て何か情報をくれたりしないか、そんな期待を抱いてしまう。

 が、何も現れない。
 空は曇っていて、星は見えない。
 初めて連れられて行った庭から見た星は見事だったなあ、とため息をついた。

 何も起こらないことを確認して、三千花は窓を閉め、カーテンも閉め、ベッドに入った。
 こんな気分ではとうてい眠れそうにないのだが。

 突然、首からペンダントが滑り落ちた。
 見ると、チェーンが切れていた。

 壊れた。
 どうしよう。

 よくわからないままにずっと大切にしてきたペンダントだった。
 手にとってみると、チェーンが切れただけではなく、トップの石が割れていた。

 直後、めまいが彼女を襲う。
「何、これ」
 ぐらぐらする。

 とにかくも彼女はベッドに横になった。そのまま眠るように意識を失った。

< 214 / 317 >

この作品をシェア

pagetop