聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
「ああ、ほら、ここに反応があったよ」
 レオルークは左腕で周りの人に見えないようにしながら、三千花を抱き込んだ右手の指で彼女の脇を撫でる。

「君も感じる?」
 レオルークが耳元でささやく。

「感じません」
 即座に否定した。

「もっと感じるようにしようか?」
「もう場所はわかりましたよ」

「物足りないなあ」
 レオルークは離れようとしない。
 三千花はかまうのをやめた。

「神官のみなさん、場所はわかりましたね」
 三千花の問いに、神官たちは戸惑うようにうなずいた。

 反応の鈍さを三千花は訝しむ。第一王子の行動のせいなのか、と思ったとき、レオルークはクスクスと笑った。

 かまってはいけない、と三千花は無視を決める。
「早く助けにいきましょう」
「無理だよ」
 言って、レオルークは離れた。
 三千花はほっと息をつく。

「この場所、君にはわからないだろうけど」
 区切って、彼は三千花の顔を見る。
 反応を窺う様子に、彼女は顔を険しくした。

「我が婚約者殿の屋敷だよ」
 三千花は顔をひきつらせた。

 レオルークはそれを見て面白そうに笑った。

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