聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
* * *
警備隊の総隊長、ダウナルドは報告を受けて気色ばんだ。
ライエルが城に送り返され、博物館、とだけ言って意識を失ったというのだ。
ダウナルドはすでにロレッティアの館に隊を派遣したあとだった。
正確に言うなら、三千花たちが城を出てすぐにロレッティアの屋敷の近隣に兵を配置していた。すぐに応援に行けるように。
直後、なぜか軍用犬が群れをなして出ていったと聞いて、彼は不吉なものを感じた。だが、そちらの調査に兵を出している場合ではなかった。
通信兵も行き交った。
信号弾が打ち上がったあと、すぐに兵たちは屋敷に向かったと聞いている。
その後、ライエルが転移魔法で送られてきた。
彼の言葉で、すぐさま城の一隊に博物館へ向かうように命じ、自身も出動した。
ダウナルドは騎兵隊とともに先行した。歩兵はあとからくる。
到着した騎馬兵たちは馬を降りて命令を待つ。
ダウナルドは博物館を見て顔をしかめた。あちこちに攻撃の跡があり、聖母の乗ってきた物が残骸と化して炎と黒煙をあげている。
まるで戦場だ。
ダウナルドは兵を振り返る。
「我らはアルウィード殿下と聖母候補様の救援のために来た。相手が誰であっても臆するな!」
平静を保つように訓練された兵士に動揺はない。
「突入!」
命じた直後、博物館が爆発した。
爆風で兵たちが押し倒される。
ダウナルドは倒されこそしなかったが、飛んできた瓦礫が体のあちこちにあたり、うめいた。
爆音で耳がやられて聞こえない。
静寂にも似た耳鳴と立ちこめる砂塵の中、必死に目をこらす。血を流して倒れるもの、傷だらけで立っているもの、うずくまるもの、驚いた馬に蹴られる者、逃げる馬に踏まれる者。
「動けるものは救助を!」
彼は叫んだ。自分が怯んでいるわけにはいかない。
もやのような埃の中を、彼は進んだ。服の袖で鼻と口を覆うが、それでも容赦なく埃は入ってくる。
瓦礫があちこちに転がり、歩きにくい。
土煙がようやく少しおさまり、彼は目の前の光景に立ちすくんだ。