聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
 国王ジャンレットは頭を悩ませていた。

 アルウィードが無事に戻ったのはいいが、すべての事件の黒幕はレオルークであると言い、彼の婚約者のロレッティアやユレンディールの母方の実家が共犯であると言う。

 どう捜査するか。
 何を公表して何を隠すか。

 誰をどう処分するか。
 ジャンレットは頭を悩ませた。





 アルスタード王国の新聞の第一面に、悲しいニュースが載せられた。

 第一王子とその婚約者が事故死した。夜間の博物館でのお忍びデートの最中に悪ふざけをした第一王子レオルークとロレッティアの魔法のミスにより爆発が起こったという。警護に駆り出された私兵と城の軍用犬はそれに巻き込まれた。
 国中は悲しみに沈んだ。

 ロレッティアの父である将軍ガイジェルは娘の行動の責任をとって職を辞し、田舎へ隠遁(いんとん)した。
 翌日にはユレンディールの母方の祖父、ギリウム・シィン・スレイトンが神殿での神官殺害、ファリエルタ嬢の殺害に関与しているとの報道があった。偽聖女の召喚、その他召喚・送還魔法の違法使用や魔法封印陣の無断持ち出しや無断使用なども発覚。国家転覆を(はか)っていた証拠も出てきたという。城内に潜伏する手勢のリストがあり、それを元に城内から逮捕者が出た。

 大神官長ライアルードは身内から重大な犯罪者が出た責任をとる形その職を辞した。異例だが、しばらくの間、国王が大神官長を兼任することとなった。

 ユレンディールは王位継承権を返上すると宣言。
 神殿は彼の任地を王都から地方へ異動すると発表した。
 それらもまた国民に衝撃を与えた。

 だが、さらに翌日には第二王子アルウィードが王太子に内定されたこと、聖母が現れたことが新たなニュースとして流れ、国民は明るさを取り戻しつつあった。

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