聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
 なんだろう。
 気になるが、服を脱いだ状態だ。試着を続行するか自分の服を着るか迷った。

 試着室のカーテンが開いた。

 は!?

 三千花は固まった。
 カーテンを開けた若い男と目が合う。

 王子様みたいだ、と三千花は思った。背の高い黒髪のクールイケメン。装飾過多な黒い服を着ている。青のような緑のような瞳が美しい。
 三千花の心に一瞬の郷愁が訪れる。

「君、それは……」
 彼女の胸元を見て男が呟く。

「――っ!」
 彼女の悲鳴は、声にならなかった。慌てて両腕で服を前に当てる。

「やっと見つけた」

 男は彼女をぐっと抱き寄せた。

 そのまま彼女に口づける。

 え!?

 初めての感触に、心臓が跳ねた。何が起きているのか、理解が追いつかない。


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