聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
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蓮月は与えられた客室で、やることもなくベッドに横になっていた。
最初に放り込まれた石牢と違い、今回は豪華な部屋だった。
あれから数日、彼は引き止められていた。
すぐに帰りたいと主張したのだが、事情聴取だの準備ができないだので、引き伸ばされていた。
とんだ貧乏くじだ、と思う。
来て、と言われてつい車に乗ってしまった。人の命がかかっているなら助けたいと思った。
こんなことになるとは予想もせずに。
数日も無断欠勤なら刑事どころか警察もクビかもしれない、とうなだれる。
真面目に市民を守りたいと思った結果が、異世界の騒動にまきこまれてこれだ。
最初にアルウィードに遭遇したとき、玄関に現れた彼を不審人物だと思った。三千花が怖がっていたから、助けなくては、と思った。
結局のところあの二人はくっついて、自分はとんだピエロだ、と思う。
少しは彼らの助けにはなったかもしれないし、市民を救ったのだと思うようにはしているのだが、苦労に見合わないとも思う。
最初に来たときはまるで犯罪者のような扱いだった。
事件後、彼は率先して博物館での救助活動を行ったとして居並ぶ兵士たちの前で表彰され、警備総隊長ダウナルドに握手を求められた。握手をした瞬間、兵士たちから惜しみない拍手を受けた。かつてない経験だった。
それは気分良かったけどさ、とため息をつく。
騎士に叙勲する話もあったが、断った。なんて謙虚な、とダウナルドは感激していた。
女性からは少なからず熱い視線を向けられた。それも彼の気分をよくした。
この世界ではまるでヒーローのように扱われるようになっていた。
それでも、彼はこちらで生きていくわけではないのだ。
あちらでのことを思うと、気が重くなる。
向こうでの三人の男性の殺害事件も「犯人が異世界の人間でした」では迷宮入り確実だ。
それでも早くあちらに帰りたい、と思う。
特に困っているのは三千花のことだ。
彼女を思い出すたびに、下着姿がちらついてドギマギしてしまう。
三千花がレオルークに服を剥ぎ取られたとき、彼はしっかり見てしまっていた。白い肌に白い下着。ほどよい大きさの胸、しまった腹、きゅっと上がったヒップ。
銃を撃つタイミングをはかるためだったから仕方ない、と彼は自分に言い訳をする。
あちらに帰って忙しい日常をすごせばすぐ忘れてしまう程度のことだ。
彼はそう思い、邪念をふりはらうように頭を振った。
そうだ、これは恋なんかじゃない、と彼は自分に言い聞かせる。
失恋確定の恋なんて、たまったものじゃない。