聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
* * *
三千花は落ち着かない気持ちで城に滞在していた。
ユレンディール、エルンレッド、神官の三人は、アルウィードが回復してすぐ、彼の転移魔法で戻ってきたと聞いた。
エミュリーがなんだか優しくなった気がした。
それだけならいいのだが。
いろいろと事実と違うことが公式に発表されているのが気になった。治安のためなどいろいろ理由はあるのだろうが、本当のことを知らせないというのは国民に対して不誠実なのではないだろうか。
さらに、国王に聖母と正式に認めると言われて慌てた。が、そもそも自分が聖母だと言いはったときもあったので、強く否定はできなかった。公表のタイミングからして、政治利用されているような気がするのももやもやする。
しかも、なぜあの夜だけ急に流星群が現れたのか。三千花の世界と天体の法則が違うのか。
アルウィードを助けたい一心で、聖母だと言ってしまった。あとさき考えずに動くからこうなるんだ、と三千花は頭を抱えた。
結局、一人では何もできなかった。みんなに助けてもらって、ようやくなんとかできた。一人では何もできないと身にしみた。
アルウィードは王太子に内定されて忙しくなり、まったく三千花のもとへは来ない。
それもまた三千花の心を複雑に揺らした。
せっかく再会できたのに。
率直に、寂しい。
だけど、同じ城の中にいる。ただそれだけでうれしいような気もした。
あのとき――博物館でレオルークが爆破予告をしたとき。
三千花は必死にアルウィードの手をとった。
手をつかんだ瞬間、光に目がくらんだ。
閃光は爆発によるものだった。
だが、三千花は衝撃も何も感じなかった。
しばらくしてから目を開けると、頭の上には瓦礫があった。それはドーム状に三千花とアルウィードの上に存在していた。
壁から落ちたランタンが、ぼんやりと二人を照らしている。
「間に合った」
ほっとしたようにアルウィードが言った。
「どうして」
何が起きたのかわからなかった。