聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
♪ハッピータウン、ハッピータウン、ハッピータウンだよ〜。
間抜けな歌が脳内に響く。
全然ハッピーじゃないよ。
何が「あなたの街のハッピータウンを目指します」だ。
帰路を歩きながら歌に八つ当たりをする。
昼間、変な男にキスされた上、おっさんに裸を見られた。
全裸じゃない、ブラつけてたし。
自分に言い聞かせる。
店員の説明によると、結局あの男たちは店のイベントなどで現れたわけではなく、完全に不審者だったらしい。
悲鳴の原因は、男たちが刃物らしき物を持って店内を走っていたためだ。
警察を呼ぶ騒ぎになっていた。
彼女も警察に事情を話した。
キスされた、変質者だ、と話したが、警察は刃物を持っていたことのほうが気になるようだった。さほど真剣に聞いてもらえたとは思えず、三千花はがっかりした。
いつの間にか左手の薬指に指輪がはまっていて、それも話した。なぜか指からはずれなくて、警察がそのままでいいと言うからはめたままになっている。
警察から解放されたあとはウェットティッシュを買って何度も口を拭いた。
拭っても拭っても気持ち悪くて、三千花の心はどんよりと曇った。
疲れて、それ以上の買い物はやめて帰ることにして現在に至る。
ファーストキスだったのに。なんでこんな目に。
彼氏いない歴イコール年齢。まさかこんなことで初キスを失うとは思ってもみなかった。
三千花はため息をついて指輪を見る。
指輪は色とりどりの石がはまっていた。赤、緑、濃い赤、紫、赤、透明。
子供が喜びそうな彩りだ。ということはこれはおもちゃだろうか。
それにしてはキレイすぎる。