聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
 店員は、個人が無断で映画撮影をしていたのかも、と語っていた。
 冗談じゃない、と三千花は思う。もしそうなら彼女の半裸が映像に残っているのかもしれない。

 そもそも彼女にキスをした意味がわからない。
 買い物なんて行かなきゃ良かった。

 テイクアウトの袋を下げ、とぼとぼと歩く。両親と同居だが今日は外で食べてくると言ってしまったから、これが今日の彼女の晩ごはんだ。

 住宅街の、街灯が少ない道だった。
 空は(くも)っていて暗く、月も星も見えない。
 公園に差し掛かり、足を早める。

 先日、不審者が出たと聞いたあたりだ。右側には住宅があるが、左手は公園だ。女性が引っ張り込まれたらしい。
 痴漢が出るところにはひったくりも出そうだな。
 ななめがけしたバッグの紐をギュッと握る。

 怖いな、と思ったそのとき。
 後ろから抱きつかれた。

 驚いてテイクアウトの袋を落としてしまう。
「ぎゃあああああ!」
 悲鳴を上げてもがく。

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