聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
部屋に帰ったあと、三千花はぐったりとソファに寝そべっていた。エミュリーが着替えを促すが、少し休憩、と言い張ってこの有り様だ。
「だらしない」
エミュリーが聞こえるようにぶつくさ言ってくるが、いちいち反応する余裕もない。
疲れた。こんなドレスであの緊張感で、みんなよく耐えられる。っていうか、みんな血縁者だから緊張しないのか。私だけ損した気分。品定めされたようなのも不快だった。
その上、帰らせてくれ、と主張したときの緊張感と、ダメと言われたときのがっかり感。感情の落差だけでもかなりの疲労を彼女に与えていた。
と、ふと気がついたことがあって、ガバっと起き上がる。
エミュリーがビクッとした。
っていうか、日本でもやったことないのに、これ顔合わせってやつか!? 私の親がいないから違うのか? いや、だけど。
エミュリーがドキドキしながら見ていることなど気づきもせず、三千花は頭を抱えた。
「なんか順調に結婚する感じになってる……?」
三千花にだって理想はあった。モテない人生で付き合った人はゼロだが、いつか相思相愛でプロポーズされて、ドキドキの両親への挨拶、結婚式はウエディングドレスで。
なのになんでこんなところでこんなことに。
三千花が悶えていると、ドアがノックされた。
エミュリーはホッとしたように応対に出る。
「ロレッティア様!?」
エミュリーの驚きの声で、三千花は振り返る。
第一王子の婚約者が、三千花の部屋を訪れていた。