聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜

「騒ぐな！」
　見知らぬ男の声。中年のようだ。

「お前、俺に気があるんだろう、来てやったぞ」
　鼻息の荒い声が耳元で聞こえる。

　なんとか逃れるが、腕をつかまれた。
　街灯で照らされたその顔には、うっすら見覚えがあった。
　昼間、彼女の半裸をニヤニヤと見ていたおっさん。

「俺のことが好きだからアピールしていたんだろう」
　んなわけない！
　何を言われているのか、わからなかった。

「つきあってやってもいいぞ」
　誰がつきあうか！

「離して！」
　彼女はもがく。が、どれだけ腕をひいても離れない。

「照れるなって」
「誰かあ！」
　叫ぶ。

　住宅が近いのに、誰も出てきてくれない。

　この状態ではスマホも取り出せない。
　男は彼女の腕をぐいぐい引っ張り、公園に連れ込もうとする。

　そこへ、黒尽くめの三人の男が現れた。
　男の仲間だ、と彼女は絶望した。

　男たちが何か長いものを構えた。まるで剣だ。
　街灯に、剣がキラリと光った。

　何これ。
　何が起きているの。

「な、何だお前たち！」
　中年男がうろたえながら彼女から離れた。

　男たちは答えない。
「うわああああ！」
　中年男は彼女を置いて逃げるように走っていった。

「え、え……」
　男たちはじりじりと寄ってくる。
　まさかあれ、本物……？

　男たちが一斉に彼女に走り寄った。剣を振りかぶる。

　殺される！
　彼女は動けず、自分をかばうようにして目をつぶった。