聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
 三千花は驚いて立ち上がった。
 ロレッティアは華麗な動きでズカズカと入ってくる。

「ご挨拶もいただけないのかしら」
 言われて、三千花は慌ててカーテシーをする。
 っていうか、挨拶ってこれであってんの?

 疑問に思いながらロレッティアを見ると、彼女はソファに優雅な動きでどかっと座った。
 不遜な態度はむしろ高潔さを物語るようでもあった。

 紅の瞳が透き通るようにきらめく。艶のある白い肌にローズレッドの口紅が鮮やかだ。緩やかに波打つ茶金の髪すらも彼女を華やかに彩る。
 美しい座姿勢で、ロレッティアはけだるげに三千花をねめつけた。その姿はいっそ(なま)めかしい。

 三千花は戸惑い、エミュリーを見る。彼女は弱々しく首を振った。

 自分で対応しろってか!
 三千花は顔をひきつらせた。
「ご、ご要件は」
 三千花が言うと、ロレッティアは目を吊り上げた。


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