聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜


 * * *


「結局あれは何だったんだろうな」
 短く刈り込まれた頭に手をやって、蓮月(はづき)は同僚刑事の優梨にこぼす。

「そんな簡単に分かったら苦労しないわよ」
 三人の男性が惨殺された事件を指していると察して、優梨は答えた。

 三人の身元を表すものはなく、服装は現代日本では通常は見ないものだった。洋服ではあったが、妙に時代がかっていた。

 三人の遺体は司法解剖に回された。
 傷口は鋭利な刃物とされたが、包丁やナイフ程度ではないらしい。長い刃物で一気に切断したと見られていた。

 日本で長い刃物といえば日本刀だが、よほどの達人でなければああはならないほどの切り口だったという。

「最近あの辺は痴漢が多かったみたい。関係してるのかしらね。関係ないにしても、目撃してないかしら」
「防犯カメラに何か映ってるといいんだが」
「聞き込みも頑張らないと」
「そうだな」

 近所へのローラーと、日本刀の保有者への聞き込み。手がかりがなければ範囲を広げて……。
 防犯カメラの確認だけでも相当に人手を取られるのに。

 三人もの人が殺されたということで帳場がたち、本部からも人が来て、署内はピリピリしていた。
 マスコミの騒ぎっぷりも相当なものだ。
 無事に解決しますように。
 蓮月は祈った。

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