聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
 驚いて一歩下がると、黒猫は窓枠にふわりと降り立った。青い目がサファイアのようだ。
「えーっと、リーンウィック……さん?」

 猫は答えず、くわえていた二枚のカードを窓枠に置いた。くるりと身を翻し、窓から飛び降りる。
「え、え!?」
 がばっと窓にへばりついて猫の姿を追う。

 猫は何事もなかったかのように地上を歩いていった。
 猫がすごいのか、これも魔法なのか。三千花にはわからない。

 窓枠に置かれたカードを手に取り、見る。
 免許証と学生証だった。
「白石晴湖さんと、乙女沢……なんて読むんだろう?」
 読み方はわからない。
 聖母候補の二人の身分証だろう、と三千花は思った。

 白沢晴湖は二七歳、乙女沢は二〇歳だった。
 イタズラ好きな第四王子が、今度は何をしかけてくるのだろう。少し不安になった。

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