聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
「俺のことはなんて呼んでくれる?」
 なんだそれ。

 三千花が視線を感じてエミュリーを見ると、彼女はうるうるとした目で二人を見ていた。何かを期待しているようでもあった。
 どういう感情!? 

 あっけにとられていると、あごをツイと持ち上げられ、アルウィードに唇を奪われる。

「痴漢王子!」
 唇が離れた瞬間に叫んだ。

「ひどい呼び名だ」
「だってちか――」
 言い終わる前に口を塞がれる。彼の唇で。

「そう呼ぶたびにキスすることに決めた」
「はあああ?」

「淑女はそんな声を上げたりしない」
「淑女じゃないし」

「これからなるんだ。問題ない」
 三千花はまたあっけにとられた。

「俺のことはアルと呼んでくれ。家族はみんなそう呼んでいるから」
 アルウィードは優しい目で三千花を見ていた。

「うう、呼び捨てで呼んでやる」
「普通なら不敬罪だが」
 アルウィードは三千花のあごをまた指で持ち上げた。
「三千花なら許す」
 そのままアルウィードは三千花に口づけようとする。

 三千花はぷいと顔をそらした。
 アルウィードはそのままかまわずに頬に口づける。

 三千花はうつむいてぎゅっと目をつむった。
「かわいいな、三千花は」
 アルウィードはそのまま三千花を抱きしめた。

 何をやっても結果がこうなる。
 なんの罰ゲーム、と三千花はぐったりした。


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