聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜
お茶の時間が終わってから、エミュリーはアルウィードの出て行った扉をずっと見つめていた。
「アルウィード様、本当に素敵」
「あいつのどこが」
両目がハートになっていそうなエミュリーに、三千花は異議を唱えた。
「聖母様はぜいたくです。あんなに素敵な方なのに。国内でも二番目に人気の王子なんですよ?」
「二番目なんだ?」
揶揄するような三千花の口調には構わず、エミュリーはうっとりと続ける。
「一番はユレンディール様です。美しい顔、美しい金髪、美しいアイスブルーの瞳。優しい微笑み。ああ、自分の語彙の少なさが憎らしい」
恍惚としてエミュリーは自分自身を抱く。
「でもみんな、アルウィード様と甲乙つけがたいと言っていて。だって、どちらも素敵なんですもの。艷やかな黒髪、整ったお顔立ち、時折見せるクールな微笑、ハートを撃ち抜かれます」
エミュリーの興奮は高まっていく。
確かに二人とも外見はいいな、と三千花は思う。
「第一王子が一番人気じゃないんだ?」
「レオルーク様は五番目です。男らしくてかっこいいですけど、一時期女遊びがひどかったらしいですし」
そう言うエミュリーは少し口をとがらせた。女の敵、と言いたげだ。
「三番目はリーンウィック様、四番目がエルンレッド様。お二方ともかわいらしくていらして、イタズラしても憎めないリーンウィック様もお優しいエルンレッド様もみんなに愛されてます」
リーンウィックのあれはイタズラで済ませられるのか。三千花は顔をひきつらせた。それともベッドに忍び込まれたのは自分だけなのか。