聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜

「皆様素敵なんですけど、でも私の一番はだんぜんアルウィード様です」
　エミュリーはそう締めくくった。

「ふうん。じゃあ、あなたが聖母になってあいつの婚約者になれば解決じゃん」
「あいつじゃありません！　アルウィード様です」
　怒ったエミュリーに、三千花は気圧された。

「それに、聖母は神官に選ばれないとなれませんし、三級貴族では王子殿下との釣り合いがとれません」

「三級貴族って何？」
　やっぱり頭に焼き鳥屋が浮かんでしまう。注文にヘイサンキュー！　と答えてそうな。

「ほんっとうに何もご存知ないのですね。勉強もまったくできませんでしたものね」
　上から目線で言われてむかっとする。あちらの世界では人並みには勉強はできた。

「いいですか、貴族というのは一級から三級まであります。一級の方が身分が高く、二級、三級と下ります。リグロット様は一級貴族です。やはり品格が私より優れているのがおわかりでしょう？」
　品格と言われても、さっぱりわからない。ただ、エミュリーに対して偉そうにしていた記憶はあった。

「アルウィード様やユレンディール様のような王族は上級貴族と言われて区別されます。また、一代限りの准(じゅん)貴族、というものもあります。これは三級貴族より下で、庶民より上です。ここまではいいですね？」
「う、うん」

「国王が統治して、貴族がそれを助けます。市民は働いて税をおさめます」
　あ、その辺は昔の日本やヨーロッパと同じなんだ。

　ふむふむ、と聞いていたらエミュリーの興がのったらしく、延々と話をされた。
　この日以来、エミュリーは教え魔になった。