聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜


 * * *


 国王は一室に王族を――アルウィード、エルンレッド、リーンウィック、ライアルード、ユレンディールを集めた。レオルークは招集(しょうしゅう)に応じなかった。女性は基本的には政務には(たずさ)わらないので不参加だ。
 王族専用の会議室だった。重要かつ内密の会議にはこの部屋が利用されている。

「聖母のことだが」
 大きなテーブルにつき、国王ジャンレットは言った。
 三千花が来てから連日のように彼女の話をしている。

 アルウィードは目を細めて父を見る。
 ジャンレットは大神官長である弟にきく。

「大神官長としての見解はどうか」
「現在のところ、どなたも聖母としてはふさわしくないように思われます」
 神殿での最終判断は、長である彼が行うことになっている。

「三千花以外は神殿が探し出した候補だろう。なぜそのような?」
「調べさせましたところ、手続きに不審がありました。記録が曖昧(あいまい)です」
「何者かの工作が?」
「あるやもしれません。ご存知のように、そもそも召喚魔法は不完全なものです」

 人を異世界に送る送還魔法は発達したが、人を()ぶ召喚魔法必要がないためにあまり発達しなかった。だから、人を喚ぶことはできても人を選んで喚ぶことはできない。完全にランダムになってしまう。

 なのに神殿は「聖母を」喚んだという。しかも事前に大神官長に報告されないまま行われた。

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