聖母召喚 〜王子に俺と結婚して聖母になれと烈愛されてますが、隙を見て逃げます〜






 気がついたら、広大な庭のような所にいた。芝生が敷き詰められ、少し離れたところに円形の噴水がある。

「どこ、ここ」
 困惑する。
 見たことのない景色だった。
 さきほどまで住宅街にいたのに。

 空には満点の美しい星空。
 眼の前には、海外の大きな城のような建物。
 そして、王子様のような痴漢。

 とっさに逃げようとして、また腕をつかまれた。そのまま抱き寄せられる。
「は、離して!」
「離さない。俺の聖母」
 彼は耳元で優しく囁く。

「離して!」
 彼女は彼の耳元で叫んだ。
 彼は一瞬(ひる)むが、彼女を離さない。

「離し――」
 また叫びかけたら、口を塞がれた。
 彼のその唇で。

「叫ぶなら何度でも塞ぐ」
 脅されて、彼女は黙る。

 どうしよう、何が起きてるの。
 彼女は恐怖に震えた。



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