27番目の婚約者
ジェラール・エンニエス辺境伯
ジェラール・エンニエス辺境伯。
彼はこの国の北東部の辺境領を治めており、中でも隣国との国境付近の警備に力を入れている。厳戒態勢で監視してくれているお陰でこれまで一度も隣国から侵攻を受けたことはない。
普段は辺境領に引き籠もっているのだが数ヶ月おきに国王陛下へ現状報告をしに、彼自ら首都まで足を運んでいる。
小さい頃にアリシアは兄と一緒に父の忘れ物を届けに王宮へ行ったことがある。しかし、よそ見をしていたせいで兄とはぐれてしまい迷子になった。
広大で迷路のような王宮は心細く、周りの大人たちはアリシアが迷子だと気づいているのに面倒ごとには巻き込まれたくないためかその場を通り過ぎていく。
いよいよ心細さが限界に達して、我慢していた涙が溢れ出しそうになったその時。
「こんなところでどうしたの?」と声を掛け、アリシアを抱き上げ助けてくれたのがジェラールだった。
訥々と事情を説明するとジェラールは何度も相づちをうって優しく頭を撫でてくれる。面倒見が良いのか、ジェラールは父が働いている執務室まで連れて行ってくれたのだった。
アリシアはジェラールにすっかり懐いてしまい、ジェラールもアリシアを可愛がり、定期的に手紙を送ってくれていたため、今日まで親交が続いている。