27番目の婚約者
27番目の婚約者
「暫く会えなかったが変わりはないか?」
「ええ。今日も無事に……婚約破棄されましたわ」
うまくいかない現状を思い出したアリシアは戯けてみせたが、続いてしゅんと肩を落とした。
「実を言うと今日婚約破棄された令息は、年が近い最後の相手でした。もう周りの結婚適齢期の男性で残っている方は誰もいらっしゃいません。……このままだと誰とも結婚できず、独身のままで生涯を閉じることになりそうです」
悲しい未来を想像してアリシアは涙目になった。
自分が公爵家に唯一貢献できることは結婚することだったから。少しでも父に娘だと認めて欲しかった。関心を持って欲しかった。
結婚して務めを果たそうとしていたのにすべては空回ってばかり。結局父には見向きもされないままで、期待外れの娘という烙印が消えることはない。
きゅっと唇を噛みしめて項垂れていると、ジェラールの優しい手がアリシアの頬に触れる。
「だったら、私の妻になってくれないだろうか?」
アリシアは目を見開いて顔を上げた。