龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?

「王宮の厩舎……ですか」

帰ってすぐヴァイスさんに、リリアナさんから得た情報を話した。

今は夕食後のくつろぎタイム。
談話室でハーブティーを飲みながらいろんな話をするこの時間が、近ごろのあたしの密かな楽しみになっていた。

「はい。リリアナさんが1週間前に厩舎で落ちているのを見たそうです」

古城の談話室はわりに小さくて、2人がけの長椅子2つとテーブルしかない。どっしりと存在感がある暖炉はあたしがすっぽりハマりそうな大きさだ。
テーブルの下のラグは龍騎士様らしく、ドラゴンの絵柄。
あたしは広い部屋よりもこちらの方が落ち着く。

「……なるほど。そうなると、いち個人で実行は不可能ですね。王宮の厩舎も厳しく管理されているはずですから」

ヴァイスさんが言うとおり、王宮の厩舎は竜騎士団以上に徹底して厳格な管理がなされている。
ウゴルは馬が食べても大丈夫だけど、なぜか馬はウゴルを嫌う。たまたまウゴルが落ちていた…なんて、そんな偶然があるはずない。

「ヴァイスさん、やっぱりこれは……」

(内部犯、それも組織的なものでは?)

あたしが懸念していた可能性を口にしようとすると、彼は唇に人差し指を当てる。なぜか、キルシェちゃんを思い出した。

「……まだ、可能性の一つに過ぎません。いずれ明らかになりますから、まだ口にしなくてもいいでしょう」

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