龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
翌朝、いつもどおり朝4時起きで竜騎士団の厩舎に行くと、なんだか騒がしい。
いつも担当が違うはずのスタッフまで勢ぞろいして、深刻な顔でなにか話し合っている。
「おはようございます、トミーさん。なにかあったんですか?」
あたしが顔見知りの厩務員に声を掛けると、彼はため息をつきながら顎で先を示した。
「ほれ、あのワイバーン。どうも調子が悪いみたいなんだ。今、医者を呼びに行っとるが…最悪、入院させなきゃならんらしい」
「えっ!?」
入院…!?
幻獣であるドラゴンは、ある程度の病気や怪我は自分でどうにかするのが一般的。特に飛竜は魔力がある子が多いから、自分で治癒できる。それだから、ドラゴンが入院するなんてよほどの事態だ。
「シュワルツ!」
思わず彼の名前を呼んで駆け寄った。
「大丈夫?どこか痛いの?苦しい?」
ワイバーンは前肢が翼になった翼竜。だから、その翼がだらりと垂れ下がり身体を支えているということは、相当体調が悪い証拠。
まぶたを閉じて苦しさにひたすら耐えている姿が痛々しい。こちらまで苦しくなって涙が出てくる。
「あの……これ」
間近にいた担当厩務員さんに、ダメ元で包みを差し出した。
「故郷で生えてたトルネリアを粉にしたものです。よかったら、シュワルツにあげてください」