龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
「え、トルネリア!?」
厩務員さんは目を見開いて驚いていた。
「あたしが故郷にいたころ、具合が悪い子がいたらこれを飲ませれば大抵良くなりましたから」
差し出した包みを開いた厩務員さんは、中身を確認するためか指で摘んで匂いを嗅ぐ。
「……確かに、トルネリアだ。ありがとうよ、こんな高価なものを」
「いえ。故郷では当たり前にその辺りに生えた草でしたから」
「さっそく調教師(せんせい)に確認してから、シュワルツに使わせてもらうよ」
厩務員さんが小走りで調教師さんに確認に行っている間、シュワルツを撫でて励まし続けた。
「大丈夫、トルネリアを飲めばきっとよくなる。あと少し、頑張れ!」
調教師さんの許可を得た厩務員さんが、さっそくシュワルツにトルネリアを与える。ハラハラしながら見守っていたけど、やがて身体が楽になったのかシュワルツはそのまま寝入ってしまった。
お医者さんが来てシュワルツを診たけど、熱中症みたいなもので、しばらく休めば大丈夫という診断がくだされたのだった。
その時はほっとひと息つけたけれども……。
この日を堺に、体調不良を起こすドラゴンが続出し始める。
やがて、1000頭いるうちの実に3分の1に当たる350頭を超えるドラゴンが体調を崩す事態にまで発展した。