龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
《ーーアリシアは、犯人ではない》
重々しい“声”が、直接頭に響いてきた。
すると、その声が聴こえたのがどうやらあたしだけじゃないらしい。 周りの人々から「今の声は?」「え、あなたも聴こえたの?」という反応があったから、おそらくすべての人たちに響いたんだろう。
「イッツアーリ、そう断じる根拠はなんだね?」
パートナーであるクロップス卿が愛龍に問いかける。
すると今の“声”は、イッツアーリのもの。
今の今まで振り向いてもくれなかったのに、こんな形でも話しかけてくれたことがとても嬉しい。
「イッツアーリ、やっと話してくれたね!あたし、すごい嬉しい。ありがとう!」
思わず感激して彼に駆け寄り抱きつくと、見事に翼で振り払われ…フラれた。悲しい。
それだからこそ、誇り高きバハムートのイッツアーリなんだけどね。
《このバカ娘はこのように、自分に素直でいつも私は迷惑している》
……あれ?なんかあたし悪く言われてない?
《いつもいつも、馬鹿みたいな大声で話しかけてくる。無駄なことだ。私はマスター以外に心を開くつもりはない。たとえ龍騎士だろうがな……だが》
イッツアーリは一度まぶたを閉じると、天を仰いでまた目を開いた。
《だからと言って、誠心誠意真心を込めて尽くしてくる者を軽んじるつもりはない。他の仲間に聴いたが、アリシアは常に我が種に誠実であった。そのような者が、我らを害するはずもない》