龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
告白
朝の4時半。
二輪車を引いたあたしは、小高い丘を登る。
「ふぬぬ……負けるかぁ!」
30度の勾配はなかなかきつい上に、30Kgの肉と20Kgの野菜と果物を満載した二輪車が重い。
汗だくな上に身体が悲鳴を上げそうだけど、コレくらいへっちゃらだ。いい訓練になる。
100m程度の丘の上には、今日も純白色の鱗が朝日に輝いて美しいワイバーン。
呼吸を整えたあたしは、そちらへ笑顔を向けて声を張り上げた。
「おはよう、イッツアーリ。今日もかっこいいね!」
「…………」
「今日のごはんはなんだと思う?」
「…………」
「じゃーん!なんと、キジ肉にウズラ肉だよ。ヴァイスさんが特別にあなたにって贈ってくれたんだ。たくさんあるからいっぱい食べてね」
「…………」
手をちぎれんばかりに振ったり、ぴょんぴょん飛び跳ねても無反応。こちらを見もしない。
(トホホ……つれないなあ。今日もだめかぁ)
肩を落としてとぼとぼと厩舎に戻ると、あたしの様子を見た厩務員のトミーがカラカラ笑う。
「あははっその様子だとまたイッツアーリに振られたな」
「残念ながら、今日もつれなかったです…」
草食竜の飼い葉を用意しながら、トミーは首を傾げた。
「だがなぁ…イッツアーリはあん時あんたを庇ったから、決して嫌ってるわけじゃないと思うんだが…むしろ好いてるはずだよ。じゃなきゃ、プライドが高く人間に関わろうとしないドラゴンがあんなふうに多くの人に“声”を聴かせるはずがないさ」