龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
あたしの懸念を、朝食の席でヴァイスさんに伝えた。
彼の今朝の格好は、ゆったりした白い開襟シャツに黒いズボンと水色の腰に巻いたサッシュ。シンプルなだけに彼の美貌を際立たせてる。
「……確かに、その心配は無理からぬことですね」
長いテーブルで対面した彼は、両手を胸の前で組んで眉を寄せた。
「……実は、ここだけの話ですが……すでに上からの圧力は何度かありました」
「えっ!?」
あたしは驚くしかなかった。国家の安全保障にも関わるこんな大事件なのに、上から捜査のストップがかかった?
「なぜ?だって、ドラゴンたちがいるからこその竜騎士団。このノプットを長年護ってきたんですよね?この前のバイキングの襲撃だって、竜騎士団が活躍したからこそ撃退できた。それなのに……」
あたしは思わず興奮して椅子から立ち上がり、バン!とテーブルを叩いてしまった。こんな時にまで、お行儀よく…なんて無理だ。
ヴァイスさんは頷いて賛同の意思を伝えてくださったから、なんとか落ち着いて椅子に座り直す。
「あなたならそうおっしゃると思いました。無論、私が母上に報告し、最優先で捜査できるよう取り計らっておきました。女王陛下の勅命ですから、さすがにもう誰も妨害できないと思いますよ」
ヴァイスさんの話に、ようやく安堵できた。
ドラゴンたちがあんなひどい目に遭ったのに、真の主犯格がのうのうと逃げ切るなんて、絶対に許せない。