龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
ごくっ、と喉が鳴る。
組んだ両手が震えているのを感じた。
でも、怖がっていちゃ駄目だ。
ヴァイスさんは、以前きっぱりと“未練はありません”と言い切ったんだ。なら、信じて訊いてみよう。
「じゃあ……幼い頃のことを。王太子殿下と……メローネ…さんのことも」
あたしが口ごもりながらなんとか希望を伝えると、ヴァイスさんはなぜかまた、ふっ…と嬉しそうに笑う。
「メローネのことが気になるんですね…?」
「そ、そりゃそうでしょう……だって……この前も2人きりで……えっ?」
いつの間にかヴァイスさんがあたしの隣へ立ったかと思うと、突然抱きしめられた。何がなんだかわからなくて、少し頭がパニックになりそうだ。
「……それだけ気にしてくださってるということは、メローネにヤキモチを焼いてくださったんですね……」
「ヤキモチ…」
嬉しそうに言われて意味不明だけど、確かにあの時メローネさんとヴァイスさんが2人きりでなにを話したかモヤモヤしたのは確かだ。
「……よくわかりませんけど……モヤモヤしました。なぜ2人きりで…って、幼なじみだから仕方ないと思いましたけど……なぜ?って…わっ…」
あたしが話すたびに、ヴァイスさんの腕に力が籠もる。ドキドキと心臓がおかしくなる前に、酸欠で死にそうだ。
「ちょ、ヴァイスさん苦しい!」
「あ、すみません」
あたしが抗議すると、さすがにパッと離してくださいましたが。