龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?

「私をかばってくださったのが、意外にも兄上だったのです」
「えっ!」

意外や意外。当事者である王太子殿下がそんな状況でも弟を庇うなんて…。

「アンテルム殿下は……よくできたお方なんですね。普通なら状況を見ただけで疑うものなのに、冷静に判断されるなんて」
「そうなんですよ。兄上は温厚な父上に輪を掛けてお人好しというか……御優しい。だけど、ただそれだけではありません。公平に判断されるお方でもある。だからこそ、次期国王に相応しい。私も、そんな兄上だから支えたいと思えるのです」

ヴァイスさんの口元が微笑んでいるのは、本当に兄上様がお好きだからだろう。兄上様だけてもこうして本当に理解しあえるご家族でよかった…あたしも素直にそう思えた。

「それにしても、メローネさん……一体なにを考えてそんなふうにヴァイスさんを嵌めようとしたんでしょうか?自分からふったも同然なのに」

あたしがずっと抱いてる疑問を口にすると、ヴァイスさんは眉を寄せて不愉快さを隠そうともしなかった。

「メローネは、昔からわがままなのです。あれもこれもほしい…と、欲張りでした。自分の腕いっぱいに宝物を抱えても、まだ欲しいと泣くような」
「うわー…それは引きますね」
「そう……だから、キルシェが私の子どもだから、自分のことを見ろ、と言下にねだりに来てるのです。ですが、大丈夫です。今の私にとってメローネは“女”ではない。ただの家族です。異性として愛することは二度とありません」

きっぱりとヴァイスさんは宣言をした。

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