龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
「おや、アリシア。今日も早いんだね」
「バルドさん」
主任教官のバルド卿が数頭のワイバーンをつれて訓練場に現れた。今日の飛竜騎乗訓練で使うドラゴンたち。ワイバーンは飛ぶドラゴンの中では比較的おとなしいから、初めての飛行訓練にぴったりなんだよね。
「やあ、ヤック、エイブ、トロン。今日はよろしくね」
厩舎でいつもお世話しているから、ワイバーンとは顔なじみ。首すじを撫でながら挨拶すると、鼻先を押し付けて鳴かれた。
「おやおや、皆アリシアのことが大好きなようだね」
「そうですかね?」
「ご覧、その証拠に皆前脚を完全に地面に付けている。絶対攻撃しないという親愛の情を表しているんだよ」
「へえ、そうなんですか」
ワイバーンはコウモリのように前脚が皮膜に覆われ翼になっている。だから、だらんと翼を伏せるのは体調が悪い時だけど…まさか、親愛の情を表す時もだなんて知らなかった。
まだまだ、あたしも知らないことばかりだ。とても勉強になる。
(バルド卿はさすが長年竜騎士と教官をしてるだけあって、ドラゴンに詳しい……そうだ!バーミリオンのことを相談してみようかな)
バルド卿ならば何千というドラゴンと接したことがあるだろうし、完全に解決できなくともなにかヒントをもらえるかもしれない。