龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
「あの、バルドさん…質問があるんですが」
「ん、なんだね?」
ワイバーンの竜具を着けるのを手伝いながら、バルド卿に質問してみる。快く質問に応じてくれそうだ。
「あたしが乗っていたファイアドラゴンのバーミリオンなんですけど…」
「あのドラゴンか…ん?」
バルド卿もバーミリオンは何度か見ているから、顔なじみと言える。だからか、その変化は瞬時に理解してくれたようだ。
「……ずいぶん大きくなっているようだね、あのドラゴンは。成長期かね?」
「いえ、まだ10歳なんですけど…」
「10歳であの大きさかね!?」
多数のドラゴンを見てきたバルド卿でさえ驚く、バーミリオンの急激な成長。やっぱり不自然なんだ…と不安になってきた。
「大丈夫でしょうか?本人は常に身体が熱いだの重いだの言ってますが……」
「身体が熱い…?ふむ」
顎に手を当てたバルド卿は、じっくりとバーミリオンを観察する。終いにはバーミリオンから《おっさん、気色悪い目で見んな!》と文句を言われた。
「ああ、すまん。君の異変の原因を探っていたんだ」
(……あれ?バルド卿……バーミリオンに言い返した?)
今までバーミリオンが心を開いたのは、あたしとおばあさまとヴァイスさんだけのはず。だから、心話の“声”は、その3人しか聴こえないはずだけど。
「バルドさん…バーミリオンの“声”が聴こえたんですか?」
「ん?ああ、しっかり聴こえたよ。ずいぶんやんちゃな話し方をする元気のいい子だ」
やっぱり…バルド卿にもバーミリオンの“声”が聴こえてたんだ。