龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
バーミリオンは肩をすくめておどけながらも、真面目な顔で言った。
《わかった、わかった。でもよ…これでオレ様、アリシアの騎竜になれるよな?》
「バーミリオン?」
彼からの意外な申し出に、あたしは目を瞬かせた。
騎竜の話は、今まで真面目にしたことがない。
一度だけ、あたしが竜騎士になると決めて故郷から出発する前の日。バーミリオンが着いてくるとごねた時だけ。
“アリシア、騎竜はどうすんだ?”
“まだわかんないけど、できたら古代竜やバハムートが捕まるといいな”
“ふーん…”
たったそれだけ。
あの時、まだ身体が小さいバーミリオンに騎竜は難しいと思ったし、竜騎士の騎竜になれば故郷とはケタ違いの危険性がある。大切な弟のようなバーミリオンに、そんな危険な目には遭ってほしくなかったんだけど。
(バーミリオンがそんなふうに考えていたなんて……あたしがバカだった。もっとバーミリオンのことを考えてみればわかったはずなのに)
毎日、毎日。頑張って訓練に付き合ってくれていた。
それを当たり前だと考えていた、傲慢な自分に腹が立つ。
「どうやら、彼は志(こころざし)は立派な騎竜のようだね。すれ違いは良くない。きちんと話し合うことだ」
バルド卿からそうアドバイスされ、コクリと頷く。
バーミリオンがなにを考えて感じていたのか、今日こそきちんと聴こう。