龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
乙女たち

「いつもすみません。ですが、なかなか出かけられる場所は少なくて」

6月も終わりに近づいた月末。久しぶりの休日だけど飛竜訓練しに行こうと思っていたら、キルシェちゃんを連れてメローネさんが古城に遊びに来た。

最近彼女は頻繁にやって来る。特にヴァイスさんのお休みには、見計らったように訪ねてきた。前もって予定を伺う使者を立てる事もなく、一方的に訪問してくるんだよね。

王太子妃と王女殿下だから無下に断るわけにはいかないけど…。

(あれ?でも、今日メローネさんは侍女も護衛も連れてきてない…?)

いつもぞろぞろ着いてくる侍女や乳母の姿がない事が、なんとなく気になった。

「メローネ、私はこの前頻繁に来るのは控えてください、と言いましたよね?」

さすがに頻度が高すぎたから、前回ヴァイスさんは彼女に注意していた。それでもこうしてやって来るからたちが悪い。
ヴァイスさんも腹に据えかねたのか、眉を寄せてやや厳しい顔つきだ。そんな彼を見たメローネさんは、しゅんと菜っ葉が萎れたように俯いた。

「ごめんなさい……やっぱり迷惑でしたよね。わたくしは遠慮したかったのですが、キルシェがアリシアさんと遊びたい、ってわがままを言うものだから……」

(うっ……)

キルシェちゃんが期待に満ちたキラキラした目でこちらを見てくると、罪悪感が半端ない。確かにあたしはよくキルシェちゃんと遊ぶから、懐かれているしそれは嬉しいことだけど。

「アリシアは忙しいのですから、自分の予定だけを押し付けるのはやめなさい。子どもの頃からわがままは必ず叶うとは思わせないように、我慢を教えるのも親の役目ですよ」

ヴァイスさんがきっぱりと断ってくださったから、後ろ髪を引かれる思いながらも訓練場を目指した。

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