龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
(それに……おばあさまのためにも、堂々とデビューしたい)
おばあさまがこれだけの教育が出来るということは、かつては確実に貴族令嬢以上の身分でいたということだろう。
もしかしたらかなり高位の貴族令嬢だったのかもしれない。
だとしたらもしあたしがその縁者の前でおばあさまの育てられた娘と知られた時、社交デビューもしていない未熟な娘と思われたら悔しい。
上流階級や社交界では、デビューしてない娘は軽んじられる。ひいては、おばあさまやヴァイスさんが軽んじられるということ。それは嫌だ。自分自身が馬鹿にされるより嫌だ。
だから。おばあさまのためにも、ヴァイスさんのためにも。社交界デビューはしておかなきゃ…!
ギュッと拳を握りしめたあたしは、ヴァイスさんを見据えてこう告げた。
「ヴァイスさん…なんの身分もないあたしが言うのは厚かましいかもしれません…ですが、おばあさまのためにも…あなたのためにも、オーパン・バルに出席させてもらえますか?」
あたしがそう希望すると、ヴァイスさんはにっこり笑って「もちろんです」と答えてくれた。
「すでに申し込みは済ませて招待状もいただいてますよ。あとは準備を済ませるだけですね」
なんて、ちゃっかり事前準備が万端なのはさすがだった。