龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
昼前になり、なんと王太子殿下自らキルシェちゃんをお迎えに来られてびっくりした。
さすがに玄関先というわけにはいかないから、ラウンジ(応接間)にお通した。
一番立派なテーブルのソファに王太子殿下、キルシェちゃん、メローネさんが座り、あたしとおばあさま、そしてリリアナさんが向かい合って座っている。
「キルシェがお世話になりまして、ありがとうございました」
アンテルム王太子殿下はヴァイスさんの双子の兄だけど、少し細身で身長も女性とそう変わりない。茶色い髪と瞳で優しそうなお顔。誠実さを描いたような御方だった。
「メローネとキルシェに関しては、色々ご迷惑をお掛けしたようで…」
「ああ、まったくだな」
なぜかまったく関わってないおばあさまが、アンテルム殿下の前で腕と手を組んでふんぞり返ってる。王太子殿下に対し、めちゃくちゃ不遜なんですが…。
「おい、アンテルム。その女の手綱をしっかり握っておけ。とんでもねーことを企む臭いがプンプンするぜ!臭くて呼吸できねえくらいだ」
おばあさまはメローネさんをビシッと指さしたあと、鼻をつまむ仕草をする…王太子を呼び捨てだし…ちょっとさすがに失礼極まりすぎない?
「ちょっと、おばあさま!その態度は失礼過ぎるでしょう」
あたしもさすがに黙っていられなくて、おばあさまを諌めようとしたけど。
「……おっしゃる意味はわかります」
驚いたことに、王太子殿下はおばあさまの発言を肯定した。
「ぼくが妻を幸せにできているとは、とても思えません……ぼくはただ、ひたすら真面目に誠実に生きようとしてきました。もともと賑やかで楽しいことが大好きな妻には、つまらない生活でしょう…ぼくは、弟と違い気の利いた台詞ひとつ言えませんから…」