龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
「だ、だけど!今は男性だっているんだから。見られて恥ずかしくないの?」
「仕方ねえだろ?身体が熱いんだからさ!まぁ、見たら1億ラサンくらいいただこうかねえ」
「なにそれ?ぼったくり…いたっ!ちょ、叩かないでよ」
「ふん、高貴なアタシの価値がわからんおバカにはちょうどいい刺激さね」
おばあさまは手にした扇子でペチッとあたしの頭を叩いた後、男性を見て片眉を上げた。
「それにしたって、また厄介な面倒事を拾ってきたもんだね。よりによって毒に侵された白銀色の竜騎士に白銀色のドラゴンか」
「……やっぱり、毒にやられてるんだ」
おばあさまの見立てはおそらく正しい。
あたしも顔色や呼吸等の症状から、とある毒物のあたりをつけて解毒作用のある薬を調合しているところだった。
「……ウズか。これまた強い殺意を感じるじゃないか。確実に息の根を止める意図がなきゃ、こんな猛毒を使わないさ。この竜騎士どのはずいぶん敵意を持たれる立場にあるようだねえ」
おばあさまが珍しく、眉をひそめて言う。
確かに、ウズは自然にある植物の中では最強の猛毒。葉っぱ1枚で大人3人殺せる致死量の毒が抽出できるうえ、証拠も残りにくく素早く殺せるから要人の暗殺にもよく用いられる。
王国では栽培禁止にされているし、もし栽培する場合でも警備の目が厳しい王立の温室で厳重に管理されるみたいだ。
一介の竜騎士程度を殺すために、そんなリスクある危険な毒を使うのは不自然。
(こんな危険な毒を使われるなんて…どんな人なんだろう……とにかく、早く解毒薬を!)
いつもより手早く調合した解毒薬を、なんとかふたりに飲ませることができた。