龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
「リリアナ様、アリシアさん!」
続いて伯爵令嬢であるマリナさん、子爵令嬢であるカリンさんも集まってきた。
マリナさんはオレンジ色の髪をゆるく編み込みにして、とび色の瞳に合ったネックレス。ドレスは小柄な彼女に合った広がりあるプリンセスライン。
カリンさんは青い髪をきっちり結い上げ、紫の瞳に合ったイヤリング。背が高くほっそりしているから、スレンダーラインのドレスがよく似合っていた。
「無事にオーパン・バルが開催されてよかったですわね」
「ええ、一時期開催が危ぶまれましたものね」
マリナさんとカリンさんが話していたとおりに、バイキングの襲撃があったこの半月。2つ目の街まで襲われた点を鑑みて、王太子殿下が「国民が苦しんでいる時に開催すべきではありません」と女王陛下に中止を進言したからだ。
けれども、竜騎士団と騎士団の活躍によりつい1週間前に2つの街を取り戻す事ができた。バイキング達も海岸線まで後退し…ならば、と女王陛下が開催を決断された。
“このような時こそ蛮族へ余裕を見せつけてやるのです。そして、民には平時と変わらぬのだと安心させるためにも”……と。あたしにはよくわからないけど、なかなか大変そうだ。
「戦線は縮小され、大抵の竜騎士や騎士は帰還されてますが…」
カリンさんが遠慮がちに口にし、あたしとリリアナさんを見る。リリアナさんは首を横に振った。
「……仕方ありませんわ。お父様は総責任者の竜騎士団団長ですもの。最後の一人が無事に離脱するまで、戦場を離れられないのは覚悟しております」
「そうだね…ヴァイスさんも龍騎士だし、王子だから…」
バイキングとの戦いはほぼ決着が着いているけど…クロップス卿と、ヴァイスさん。2人はまだ戻ってきていなかった。