龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
8月になり、竜騎士養成学校の卒業試験である臥龍の儀当日。
あたしは朝から緊張…はしてなかった。
「ん〜相変わらずうめぇなあ、ここのメシは」
すっかり古城の一員になったおばあさまは、今日もテーブルに乗り切らないほどの山盛り料理を片っぱしから片付ける。
見てるこっちが胸焼けしそうだ。
「おばあさま…よく朝からそんなに食べられるね」
「朝メシは身体の資本だぜ!アンタたちこそ、そんな少食でよく保つな?」
いや…少食って…。
普通にライ麦パン3つと野菜スープにチーズ、ベーコンに目玉焼きとサラダにフルーツを食べてますが?
「おばあさまが異常なだけでしょ」
「は?アタシのどこが異常だよ?」
「ぜんぶ」
あたしがきっぱり答えると、ヴァイスさんがいいタイミングでおばあさまに好物を勧めてくれた。
「まぁまあ…アリスティア様、このルイスリンプのサーモンサンドはいかがですか?」
「お、気が利くじゃねえか!いただきーあむっ…あーうめぇ!!」
単純なおばあさまはすぐに食べものに釣られるから扱いやすい。
おばあさまを手のひらで転がしたヴァイスさんは、あたしにエールをくれた。
「それはそうと…アリシア、今日の臥龍の儀、頑張ってくださいね」
「うん。まぁ、あたしはバーミリオンを騎竜にする予定だけど、他のみんながドラゴンと契約できるか、だよね」
一番心配になるのはそれだ。
ドラゴンは捕まえるだけじゃいけない。心を通わせ、ドラゴンが自分の意思で騎竜になることを承諾しなきゃいけないんだ。