龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
おばあさまはヴァイスさんにこう告げる。
「アンタを助けたのはアリシアだ」
「はい。とても助かりました。アリシアにはどんなに感謝してもしきれません…ですから、お礼に私ができることでしたらなんでもおっしゃってください」
ヴァイスさんがほほえみながらそうおっしゃる。
(彼は龍騎士……彼に頼めば、あたしの長年の夢が叶うかもしれない…でも)
チラッとおばあさまを見てみる。今はちゃんと魔術で身体を覆ってる。まだ外見は二十代の若さとバイタリティーがあるけど…。
今まで聴いたことがない“アタシも年だからね”という言葉が胸に引っ掛かる。おばあさまは年を明かしたことはないけれども、少なくとも60は過ぎてる。
この国の平均寿命を考えれば、いつ何があるかわからない年齢なんだ。
(おばあさまを残してまで行くの…?ううん、やっぱりそれはできない)
今の今まで女手一つで育ててくれたんだ。まだ孝行もしきれてない…と考えていると、おばあさまがスパンとあたしの迷いを見抜いた。
「アリシア、アンタまたつまらないことでくよくよ考えているだろ?アタシは120まで生きるんだ。まだ半分しか生きてないんだから、若造さ。もっと若いガキのアンタが余計な気を回すんじゃない。ガキならガキらしく、もっとわがままに生きな」