龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?


まばゆい光で目がくらむかと思えた。

「うわあ…!」

目が慣れると、その煌めきに視線を奪われる。
古今東西あらゆる宝石や貴重品財宝を集め、贅を尽くしたような。えも言われぬきらびやかな世界が広がっていた。

《おい…あの建物は…まさかダイヤモンドか?》
「うわあ…あの椅子とかテーブル…まさか黄金?」

あらゆるものが宝石や黄金でできている。
目がチカチカして、思わず目を手でこすった。

《すげぇな…あちこちに宝石が転がってるぜ。一つくらい失敬してもわからなさそうだなぁ》
「だめだよ、バーミリオン。あたし達が来た目的は、古代竜に会って竜騎士になること。それに、人間は持てば持つほど逆に飢えて欲張りになるんだって」
《ほー…そんなモンか?ドラゴンのオレ様にゃわからんが》
「おばあさまの受け売りだけどね。確かにここにある物は綺麗だよ…でも、あたしには必要ない。だって、大切なものはもうあるから…」

あたしは胸に手を当てて、目を閉じる。思い浮かぶのは、おばあさまと…ヴァイスさんと…バーミリオン。そして、イッツアーリ、シルヴィア…ザラード、リリアナさん…カリンさん…マリナさん…バルト卿にメグさん…クロップス卿…セバスチャン…
他にも、たくさんの人たちに…ドラゴンに…。

思い出しきれないほど、たくさんの人たちとの出会いと縁と絆。

それが、あたしにとって何にも代え難い宝石だった。

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