龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?

おばあさまは葉巻きを吸うと、にやりと笑う。

「アンタがいなくてもアタシは30年以上ひとりでやってきたんだ。その矜持をバカにすんなよ?ん??」

その言葉で、おばあさまは大丈夫だと確信できた。

そして、あたしは長年の夢だった願いを初めて口にする。

「お願いです……ヴァイスさん。あたしはこの地を護るために竜騎士になりたいんです!王都へ連れて行ってください!!」

彼に向かって、深々と頭を下げた。
決して、遊びや興味本位じゃない。
将来この大切な地を護るためにも、力がある竜騎士になりたいんだ。
竜騎士になれば、組織的に護れるからおばあさまの負担も減る。

何より、あたし自身が護りやすくなる。

ドキンドキンと心臓が早鐘のように鳴る。緊張のあまり冷や汗が背中を伝った。

「アリシア」
「……はい」
「顔をあげてください」

ヴァイスさんの穏やかな声で少し緊張が抜けて、おそるおそる顔を上げる。彼は、声と同じ穏やかな顔でこう言った。

「あなたを竜騎士へ推薦するのはまったく構いません。今日だけでなく…私が倒れてからずっとあなたは献身的に私とシルヴィアを看護し助けてくださいました。見ず知らずの他人である私たちを」
「……でも、それはあたしの自己満足で……」
「はい。ですが、私利私欲を捨ててここまで尽くせる人間はなかなかいません。ときには薬草のために命の危険を冒してまで…」

一度うつむかせた顔を、ハッ、と上げた。

「……知って、いたんですか?眠ってらしたのに」
「はい。ウズの毒は体と思考の自由は奪いますが、知覚は残っていたので。申し訳ありませんが、会話は全て聴かせていただきました」
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