龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
「竜騎士にしてくださり、ありがとうございました。行こう、バーミリオン」
《おうよ!活躍してヒーローになってやらあ!!》
竜騎士になった今なら、堂々と戦いに参加できる。
古代竜にお礼を言ってから、すぐに滝を飛び出した。
バイキングの猛攻を受けた海岸線は、ここから50kmほど離れてる。でも、ファイアドレイクとなったバーミリオンには苦もなく飛べる距離。あっという間に現地に着いた。
「……見えてきた!」
竜騎士団と騎士団の駐屯地と小さな港町がある地区。
普段はのどかな景色が広がっているんだろうけど、今や惨憺たる有様。
建物という建物が破壊され、かろうじて残っても燃えてしまっている。
幸い倒れてる人は見かけないけど。
《アリシア、あっちにヴァイスとシルヴィアがいるぜ!》
「うん、行ってみよう…わっ!」
いきなり長弓が飛んできて、バーミリオンが避けてくれなかったらどうなったか。今は戦いの最中だ、と気を引き締めてショートボウを手にした。
すると、燃えた家から逃げ出した人がいたけど、バイキングが斧を手に追いかけはじめた。
「バーミリオン、あっちに襲われてる人が!行ける?」
《誰にものを言ってんだ。オレ様に不可能はなぁーい!》
バーミリオンは急旋回して、高度を低くする。
「もう少し……よし!」
弦を引き絞り、狙いを定めた。
「今!」
あたしの放った矢はまっすぐ飛び、バイキングの防具の隙間に突き刺さる。その場で膝を着いたから、足止めには成功した。