龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?
ヴァイスさんはシルヴィアの上から身を乗り出し、ギュッと抱きしめてきた。
「アリシア、怪我は…?大丈夫ですか?それより、なぜこちらへ…?」
「古代竜に、救ってほしいと言われたんです。あ、無事に竜騎士になれましたから。もう心配いりませんよ!」
むん!と両手を挙げて、ヴァイスさんへ無事をアピール。
「あたしももう、1人前の竜騎士です!だから、ヴァイスさんと一緒に戦います!」
「ふ、相変わらず頼もしいですね、アリシアは」
緊張していたヴァイスさんの顔が、少しだけ柔らかくなる。よかった、と安堵していると…彼はふたたび真顔になった。
《おい、まどろっこしいな!なんで船を沈めねえ?おまえらがやらねえならオレ様がやってやる!》
バーミリオンが意気盛んにそう吼えると、ヴァイスさんの眉間のしわが深くなる。
「……それは、できません」
《なんでだよ?船を沈めりゃ一発だろ!?》
バーミリオンがまた吼えると、違う“声”が響いた。
《……愚か者!船には人質がおるのだ!》
今のはシルヴィアの“声”らしい。
「人質…?本当ですか!?」
あたしが訊くと、ヴァイスさんは無言で頷く。
彼の重い表情から察するに、人質は身分の高い人だとわかる。
「え……一体だれが……」
「……メローネです」
「え?」
今、とんでもない名前が聴こえたような…?
耳を疑っていると、もう一度ヴァイスさんがその名前を口にした。