龍騎士殿下の恋人役〜その甘さ、本当に必要ですか?

(わわ…は、恥ずかしい!意識がないと思って、いろんなこと話しちゃったよ〜)

ヴァイスさんの顔がまともに見れなくて、思わず両手で顔を覆った。

クスリ、と小さく笑った声が聴こえる。おばあさまは豪快に笑うから、きっとヴァイスさんだ。やっぱり笑われた…!と、耳まで熱くなる。

「ふ、……かわいいな……」

ボソッと、彼がなにか呟いたけど。あたしにはよく聴こえなくて思わず訊き返した。

「えっ、なにかおっしゃいました?」
「いえ……あなたの人格に問題はない…むしろ、竜騎士に相応しい高潔さがあります。そして、ドラゴン等の幻獣に対する知識や騎乗技術は目を見張るほど素早らしい。下手な竜騎士よりよほど上だと断言できます。この2点だけでも、竜騎士候補へ推薦できる条件は満たしています」

ヴァイスさんが指折り数えながら、あたしの評価を披露する。それは、今までおばあさまにろくに認められた事がないあたしには、高すぎる評価に思えた。

「ヴァイスさん、過大評価しすぎです!あたしは何も特別なことなんて…毎日同じことをしていれば、誰だってできるようになります」

でも、彼は首を横に振ってあたしの言葉を真っ向から否定した。

「確かに、これが日常ならばある程度できるようになります。ですが、特別な訓練を受けてない軍人でもない16歳の少女が、旋回するドラゴンの上から30メートル下の木に隠れた密猟者の足をショートボウで寸分違わず射る…竜騎士でも片手で数えるほどしかできない芸当を、あなたはいとも容易く行った。あなたに自覚はないようですが、これがどれほど素晴らしい技術か。いずれわかるはずです」

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